デベロッパー編、ゼネコン編に続き、全3部構成の最後の総括編となります。
デベロッパーとゼネコンの悲喜こもごもを見てきた中で、いろいろ思うところはありますが、マンション検討者にとって今後のマンション市況がどのようになっていくのか、誰しもが気になっているところです。
果たして今買うべきなのか、それとも待つべきなのか、いろいろな意見があると思いますが、つーもなりに客観的かつ中立的に、また論理的に考察した中での結論について、今回は触れていきたいと思います。
デベロッパー編はこちら↓
ゼネコン編はこちら↓
※画像は本ブログ記事の内容とは関係ございません(200億円と言われるペントハウスには誰が住んでいるのだろうか…某有名社長とは聞いたことあるけど)
既に読んでくださっている方も多いかもしれませんが、デベロッパー編、ゼネコン編の簡単なおさらいしますと、
デベロッパー→業績好調🌸
ゼネコン→業績不調⛄
というのが全体傾向で、その要因としては、原価高騰による影響を受注金額に転嫁できず(しきれず)、結果としてゼネコンに原価高騰の煽りが直撃している→デベロッパーには土地以外の原価高騰の影響が殆ど及んでいない、というのが現時点での状況であると考えられます。
今回の総括編では、この状況を踏まえて今後マンション市況はどうなっていくのかについて、考察を進めていきたいと思います。
一般財団法人建設経済研究所から、建設経済モデルに基づいた住宅着工戸数及び民間住宅投資額の見通しが公表されています。
直近では2023年10月に公開されている情報がありましたので、こちらを基に考察を進めていきます。
なお、建設経済モデルは何ぞや?という方は、リンク先の説明をご参照ください。
参照リンク→建築経済研究所「建設投資の見通し」
まず、全体的な傾向としては、着工戸数は今年は微減、来年は横ばいながらも、民間住宅投資額はいずれも上昇予想、つまり原価の上昇が予想されています。
その要因としては「住宅の高付加価値化」と「建設コストの上昇」が挙げられています。
このうち、建設コストの上昇はゼネコン編でも見てきているので、納得の理由です。
もう一つ挙げられている住宅の高付加価値化が今後の市況考察におけるポイントになるでしょうか。
昨今は郊外寄りの立地でもエリア史上最高価格(しかも従来のエリア相場からかなり上振れしている)のマンションが次々に誕生しています。
原価高騰による販売価格の上昇は理由としては納得できるところはあるものの、やはり心情的にこの値段…?と検討者が考えてしまうと、デベロッパーは販売活動に苦戦してしまいます。
そこで、最近は郊外寄りのマンションでも、従来そのエリアになかったような仕様の高い物件、典型的にはタワマンの建設が増えてきているように感じます。
タワマン=資産価値が高いというのがやはり一般的な感覚であり、そのことがデベロッパーの検討者への支給ポイントの一つになっています。特に駅前は資産性が抜群!というあのグラフを見たことがある方は少なくないと思います。
画像出典:東京カンテイ プレスリリース
そのため、今後も郊外寄りのエリアにおいて、駅前タワマンなど高付加価値型のマンションの建設が継続していくといったことを背景にして、高付加価値化という表現を使って建築経済研究所のレポートでは謡われていますが、多少コストをかけてでも付加価値を高めていかないtを付けないと、集客力で相対的に劣る郊外寄りのエリアでは、販売価格の妥当性を検討者にも納得してもらえなくなってきている、ということで個人的には納得感があります。
ちなみに、上記の住宅には分譲だけでなく賃貸も、マンションだけでなく戸建も含まれているため、もう少し細分化した予測も記載されています。
同レポートによると、分譲マンションに限っては着工戸数のさらなる減少が予測されており、供給戸数の増加は、定性的要因から鑑みても今のところ見受けられません。
デベロッパー編、ゼネコン編及び子飼の総括編の前半部分を踏まえて、分譲マンションを取り巻く状況としては、以下のような状況にあるということが分かってきました。
① デベロッパーの業績好調
② ゼネコンの業績不振
③ 原価の高騰(土地、建築資材など諸々)
④ 分譲マンション着工戸数の減少
⑤ 分譲マンションの高付加価値化(特に郊外寄りエリアにおける駅前タワマン建設などが典型例)
このことから、今後のマンション市況におけるシナリオについて、つーもなりにいくつか考えてみました。
① マンションの販売価格は今後も上昇
検討者にとっては好ましくないパターンですが、可能性としては一番あると考えています。
本来、ゼネコンが得られるべき利益を獲得できていない以上、早晩デベロッパーとの受注金額にその逸失利益相当分が今後は織り込まれていくはずです。
そこで、「はい分かりました」とデベロッパーが受け入れてくれて、そのままならいいのですが、ゼネコンに渡した利益分は、販売価格に転嫁して回収しよう、そして現状の営業利益率を維持ないしは上昇させようという方針を取る可能性は、ステークホルダーの多い営利企業である以上、十分に考えられます。
現時点では、デベロッパーは購入者よりはむしろゼネコンから利益を多く受け取っていると考えることが出来ますが、このシナリオになった場合は、デベロッパーは購入者からより利益を受け取っている状況ちうことになり、購入者にとってはあまり好ましい状況とは言えません。
しかしながら、そこはデベロッパーもプロですので、前述の通りマンションの高付加価値化により、販売価格の妥当性を訴求してくるのではないかと考えられます。
② マンション販売価格は横ばいで推移する(ゼネコンへの利益還元)
検討者にとっては昨今のインフレ市況において一番望まれるシナリオで、個人的にはデベロッパーの矜持からしても、こうあってほしいという願望に近いシナリオです。
ゼネコン編で述べたように、現時点でゼネコンの得るべき利益をデベロッパーがごちそうさましている状況になっていますので、これを適切に配分すべく、原価高騰分の影響をきちんとゼネコンとの受注金額に反映させることにより、ゼネコンの営業利益率は改善傾向に、デベロッパーの営業利益率はやや低下傾向になる、といった具合です。
③ マンション価格は横ばい(で推移する(デベロッパーの利益捻出)
検討者にとっては、①よりも好ましくない、個人的には最悪のケースと考えています。
要は、販売価格は今後上げていけない…その代わりに利益を捻出するために、スペックを落とすことや専有面積の狭小化/共有部分の削減をすること、要はコストカットで単位面積当たり利益の最大化を今後も進めていくというシナリオです。
本来、一定以上の利益が獲得できているのであれば、デベロッパーとしての強い矜持がある限りこんなことする必要もないのですが、残念ながらデベロッパーによってそのスタンスは異なっているため、すべてのデベロッパーに望むことは出来ません。
そして実際に、この傾向は既に所々で顕在化しているような気がしておりまして、立地の希少性を謡って、仕様を下げているようなマンションの東條頻度が、以前よりも上昇している気がしてなりません。
特に広域集客を目指すマンションよりも、集客エリアの狭いマンションに見受けられ、坪500~700万円もするような一般的には高級マンションと言われる部類のマンションでも、空地率が低い、ディスポーザーがない、外廊下、直床、トイレの鏡ですらオプション…などといったようなコストカットをしているケースが見られます。
ここで誤解して頂きたくないのは、ディスポーザーがなかったり、外廊下であること自体がダメと言っているのではなく、販売価格の上昇を考慮してもなおその価格帯にスペックが見合っていない、ということについて言及しています。ディスポーザーがなかったり、外廊下だったとしても、それがちゃんと価格に反映されていれば、トータルバランスとしてOKなのです。
ですが、現在はそのバランスが崩れているマンションが目立ってきていると感じざるを得ませんし、マンションが好きなつーもとしては、悲しくて仕方ありません。
結論から言うと、個人的には今のところマンション価格が下がる短期的なシナリオは想定できません。
その理由としては、①分譲マンションかから生み出される利益のデベロッパーとゼネコンの配分がおかしい、②原価高騰が継続している、③賃料の上昇と考えています。
まず①としては、デベロッパーとゼネコンの利益配分がおかしいだけで、その是正が図られたところで、マンションの販売価格が下がる要因にはならないためです。
つまり、あくまでデベロッパーとゼネコンの間の話であって、そこに検討者(購入者)は関係していません。
喧嘩両成敗でどちらも低い利益率で分譲マンションに関する事業をやってねという、大岡越前みたいな人でも登場すれば別ですが、そんな人がいるはずはありません。
次に②ですが、これはもうこれまで幾度となく出てきましたが、原価が高騰している以上、このトレンドが短期間で根本的に変わらない限りは、マンションの販売価格を下げる理由がデベロッパーには存在しません。①の要因として挙げたゼネコンとの利益配分の是正が仮に図られるならなおさらですし。ゼネコンにとってもこれ以上業績不振を甘受するわけにもいきません。
最後に③ですが、これは原価とは直接関係がないのでこれまで触れてきていなかったポイントになります。
アットホームが2023年9月に公開したプレスリリースで、賃料の上昇が顕著になってきました。
画像出典:アットホーム 2023年9月25日付ニュースリリース
2022年下半期からの上昇が急激になっており、分譲マンションの主戦場である70㎡以上のファミリーー向けは、2015年比で+27%上昇しています。
都内でちょっといいファミリー向けの3LDKを借りようものなら、月30-40万円ほどの家賃が発生する状況で、これが毎月ただ流れていくだけとなると、購入しようかなという気持ちに普通はなります。また、これから子供が生まれるなどして広い部屋を借りようかなとなったときに、この家賃上昇の波が直撃することになります。
そして、グロスが大きいだけに上昇率が家計に与える影響は、よりクリティカルなものとなります。
そのため、マンション販売価格の上昇が継続している裏では、家賃の上昇が顕著になってきており、結果として購入検討層の絶対数がそう変わらないならば、新築・中古問わず分譲マンションの需要も底堅くなるため、需給関係からマンション価格の低下はやはり考えにくいものがあります。
このように、①~③について考えれば考えるほど、調べれば調べるほどマンション価格の下落を示唆するような状況は今のところ見当たりません。
リーマンショックのような世界的な経済ショック、東日本大震災のような大規模天災、新型コロナウイルスのようなパンデミックが発生すれば、マンション価格のトレンドも一気に転換することも考えられますが、それ以前にそれらの発生を予期できる人はいません。
もしそのような事象の発生を信じて、マンション価格の下落を待つのであれば、それは個人の価値観次第ですので止めはしませんが、個人的には分の悪いギャンブルなんじゃないかな?と思います。
もしそのような人がいれば、期待値についてどのように考えているのか、ぜひお話を伺ってみたいところです。
ここまでデベロッパー編、ゼネコン編、総括編と3部構成でブログ記事にしてきましたが、考察を経たうえで個人的な結論を改めて述べますと、「短期的にはマンション価格は上昇傾向が続く、良くて横ばい(坪単価上昇やコストカットの可能性込み)」となります。
基本的にマンション価格下落を待ったところで、特に一次取得者の方は経済合理性を考えても良いことはないと思います。
そのため、マンション価格が高いからあきらめようとか、〇〇がマンション価格は暴落すると言ってたからそれを待とうといった思考放棄だけは決してしないでください。
もし、このブログ記事を読んだうえで、「いや、それでも〇〇だからマンション価格が下落すると思うから自分は待つんだ」というのであれば、それは立派な選択肢だと思いますので、それを信じてまっていただいてもOKです。
しっかりと自分で考えたうえで買うなり待つなり判断をして、それに則った行動をすれば、結果がどうなったとしても、自分で考えたうえでの結果なので納得が出来るはずです。
思考放棄した結果、想定外の結果になってしまったとき、それを後悔したとしても、時間を取り戻すことは出来ません。
せっかくここまで長文をお読みいただいたからには、マンションの購入について、より積極的に、より深くご検討頂けるようになる、そのきっかけになれば幸いです。
ただし、数年前のように何を買ってもOKという時代ではなくなってしまったのが、非常に難しいところです。
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